こんにちは。イオンモール柏向かいにある、ウィズ歯科クリニック歯科医師小川です。

「ムーシールド」という言葉を初めて聞く方も多いのではないでしょうか。

今回は、小児の受け口の治療法であるムーシールドについて、メリットやデメリット、また治療期間や費用まで徹底解説していきます。お子さんの治療を選択する際にぜひ参考にしてください。

ムーシールドとは、受け口を改善する治療法です。乳歯が生えそろい、永久歯が生える前の3歳ごろから選択することができます。

専用のマウスピース型の矯正装置を装着し、舌や口の周囲の筋肉の状態を整えることで受け口の原因を取り除き、受け口を改善していきます。ムーシールドは、通常より低い位置にある舌を持ち上げることで、舌が下顎を押し出さないようにできます。

また、上唇の力が強すぎたり下唇の力が弱すぎたりすることも受け口の原因の一つです。ムーシールドで治療をすることで唇の力を調整し、バランスを整えることによって受け口を改善できます。舌の位置や唇の力の入り方などを矯正していくことで、癖の解消や治療後の再発防止にもつながります。

次に「受け口」について説明していきます。

受け口とは、通常の噛み合わせとは反対で、下の歯が上の歯より前に出ている状態のことです。遺伝や歯や顎の骨が成長している幼少期からの癖が原因となることが多いです。

受け口は「反対咬合」や「下顎前突」と呼ばれることもあり、主に2種類に分けられます。

1つ目は、歯の向きが問題で受け口となっている歯槽性反対咬合です。これは、顎には問題がなく、上の前歯が内側に傾いていたり、下の前歯が前に傾いていることが原因で起こります。

2つ目は、顎の骨に問題がある骨格性反対咬合です。これは、通常より上の顎が内側にずれていたり、下の顎が前方にずれていることが原因で起こります。

 受け口を放置するリスクは？

では、受け口を放置するとどのようなリスクがあるのでしょうか。

受け口を放置するリスクは、以下の5つです。

・咀嚼に影響が出る

・発音に影響が出る

・顎関節症を引き起こす

・虫歯や歯周病のリスクが高まる

・見た目に影響する

それぞれ詳しく解説していきます。

咀嚼に影響が出る

反対咬合により「噛む」という動作に影響が出ます。

噛み合わせが悪いことで、食べ物の咀嚼が不十分になりやすいです。咀嚼が不十分だと食べ物を丸呑みする状態になり、消化管に影響を及ぼします。咀嚼がうまくいかないと、栄養がしっかり吸収されないことがあり、身体の成長にも影響が出ることがあります。

発音に影響が出る

反対咬合になると「サ行」など一定の発音が難しくなります。

発音が難しくなると舌っ足らずな話し方になり、コミュニケーションに影響が出てしまいます。

顎関節症を引き起こす

反対咬合は正常な方向に噛む力が与えられず、顎の骨や咀嚼筋に負担がかかりやすくなります。それによって、顎関節症を引き起こすことがあります。

顎関節症になると、顎に痛みや違和感が出たり、異音がするようになります。

虫歯や歯周病のリスクが高まる

反対咬合などで噛み合わせや歯並びに問題があると、ブラッシングが隅々まで行き届かないことがあります。それにより、歯垢が残りやすくなり虫歯や歯周病のリスクが高まります。

また、受け口になると口が閉じにくくなり、口内が乾燥しやすくなります。唾液による自浄作用がうまく働かず、菌が繁殖することで、虫歯や歯周病になりやすくなるのです。

見た目に影響する

反対咬合のいわゆる「しゃくれ」のような状態になると、見た目に変化が起きるでしょう。心理的影響を与えることもあります。

次に、ムーシールドのメリット・デメリットについて解説していきます。

メリット

ムーシールドのメリットは、以下の5つです。

・治療の痛みが少ない

・費用が安い

・装置を取り外すことができる

・日中の生活への影響が少ない

・抜歯が不要である

それぞれ詳しく解説していきます。

治療の痛みが少ない

ムーシールドは、就寝中のみ装着すればよく、歯や骨の成長に合わせゆっくりと矯正を行なうため、痛みや不快感が少ないといわれています。

費用が安い

歯科医院によって異なりますが、ムーシールドは50,000～100,000円ほどで治療できます。マウスピースの再調整などで別途費用がかかることもありますが、ほかの矯正治療に比べて治療費は安価といえるでしょう。

装置を取り外すことができる

ムーシールドはマウスピース型の装置であるため、いつでも取り外すことができます。食事や歯磨きをふだんと同じように行えるのは大きなメリットといえるでしょう。

日中の生活への影響が少ない

ムーシールドは就寝中のみ装着すればよいことが多いです。日中は装着する必要がないため、日中の生活や見た目の影響もありません。

抜歯が不要である

ムーシールドの治療は抜歯などの外科的治療を伴わないため、身体への負担が少ないです。

デメリット

ムーシールドのデメリットは、以下の4つです。 

・治療ができる時期が限られる

・矯正後に受け口に戻ってしまうことがある

・骨格性反対咬合には不向きである

・口腔内のトラブルを引き起こすことがある

それぞれ詳しく解説していきます。

治療ができる時期が限られる

ムーシールドは、歯や骨の成長時期にしか使用できないため、治療できる時期が限られてしまいます。

矯正後に受け口に戻ってしまうことがある

ムーシールドで矯正したあとに、成長過程で再び受け口に戻ってしまうことがあります。また、癖によって受け口になってしまった場合、癖が治らないと再び受け口になるリスクがあるでしょう。

骨格性反対咬合には不向きである

ムーシールドは、すべての受け口が対象となるわけではありません。骨格性反対咬合などの症例はムーシールドでは効果が出にくく、適応外となることもあります。

口腔内のトラブルを引き起こすことがある

ムーシールドの装置が口内に当たることによって、口内炎などの口腔内のトラブルを引き起こすことがあります。口腔内にトラブルが起きた際には、早めに歯科医師に連絡して対処してもらいましょう。

また、装置による口腔内のトラブルを予防するためにはムーシールド本体を清潔に保つことが大切です。取り外したら水かぬるま湯で洗い、しっかりと乾燥させてから専用のケースに入れて保管しましょう。定期的にマウスピース専用の洗剤を用いて洗浄することで装置をきれいに保てます。

ムーシールドは、お子さんが寝るときに装着し、朝になったら外します。就寝中のみ装置を着用すればよいため、治療は比較的簡単でしょう。

ムーシールドは、既成のものを使用する場合とオーダーメイドで作成したものを使用する場合があります。幼少期の治療のため、オーダーメイドで作成する際に必要な型取りが難しいことが多く、既成のムーシールドを選択することが多いです。

ムーシールドの治療は乳歯がすべて生えそろってから行われるため、3歳ごろから治療を開始することが多いです。

3歳児健診で受け口と診断され、そのあと何も治療せずに受け口が治る確率は6％ほどといわれています。そのため、歯や骨の成長過程である3〜6歳ごろに治療を開始するのがよいでしょう。

ムーシールドの装着は就寝中のみであるため、1日の装着時間は8～10時間ほどです。治療期間の目安は6か月～1年ほどですが、お子さんがどれだけ協力できるかによって治療期間が多少前後することがあります。

治療中は1か月に1回ほど、虫歯の確認やお口の掃除、装置の確認などが必要となるため、定期的に受診する必要があります。

前述のとおり、ムーシールドの費用は歯科医院によって異なりますが、診療代を含めて50,000～100,000円ほどです。そのほか、定期検診などで別途費用がかかります。

今回は、小児の受け口の治療である「ムーシールド」について解説しました。早期治療がお子さんの治療負担の軽減につながることがわかっていただけたでしょうか。ムーシールドは苦痛の少ない治療法です。お悩みの方は、歯科医師や歯科衛生士に相談してみましょう。

少しでも気になることがありましたら、柏の歯医者「ウィズ歯科クリニック」までお気軽にご相談ください。ご連絡をお待ちしております。

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