【症例】仮歯の装着を即日行える「抜歯即時インプラント埋入処置」による前歯のインプラント治療
千葉県柏市にある歯医者「ウィズ歯科クリニック」の歯科医師・小川です。今回は、60代・主婦の患者様の症例をご紹介します。
こちらの患者様は、元々他の歯科医院にて左上2番の被せ物(補綴物)の治療を受けられていました。しかし、治療後すぐに被せ物の離脱を繰り返すようになってしまい、その都度何度もセットを行っていたようです。
やがて、その歯科医院での治療に疑問を持たれ当院にご相談・転院された経緯があります。この患者様のように、セカンドオピニオンとして当院にご相談いただくケースも多くあります。
患者様からは、「何度も離脱を繰り返してきたが、見た目の美しさを含めしっかりと根本的な治療をして欲しい」「治療期間はなるべく短くしたい」とご要望がありました。
それでは、この症例について詳しく解説していきます。
治療の内容
インプラント治療
インプラント治療の費用(税込み)
・サージカルガイド:55,000円
・インプラント体:210,000円(CAMLOG社)
・造骨処置(インプラント同時埋入):55,000円
・仮歯(1歯):15,000円
・チタンアバットメント+ジルコニア上部構造:190,000円
インプラント治療の期間
約4ヶ月
※通院回数3回
インプラント治療前の状態・主訴
・60代・主婦の患者様。
・他の歯科医院からの転院。
主訴・ご要望
・他の歯科医院で左上2番の被せ物(補綴物)の治療を受けていた
・治療終了後すぐに被せ物が脱離・何度も再セットを繰り返し、当院に転院
・審美面の改善を含め根本的な治療をして欲しい
・なるべく短期間で治療を終わらせたい
他院で被せ物の治療をしたものの、治療終了後すぐに被せ物が脱離してしまったそうです。確かに被せ物は時間の経過とともに脱離する可能性は高まりますが、しっかりと治療を行えばすぐに脱離することはほとんどありません。しかも、脱離は何度も繰り返していて、その度に再セットを繰り返していました。その場しのぎの治療を繰り返しても根本的な解決にはならず、患者様への負担は増すばかりです。患者様としても納得できる説明が得られなかったようで、当院への転院を決意されました。
また、「前歯は見た目にも影響するので、見た目の美しさを含めしっかりと根本的な治療をして欲しい」、「治療期間はなるべく短く終わらせて欲しい」とのご要望がありました。
インプラント治療の詳細
他院では納得できる説明を受けていなかったとのことなので、「現在の状態を改めて検査し直してから治療をスタートしませんか?」とご提案し、患者様にご納得いただきました。具体的には、口腔内診査やX線撮影を行い左上2番の歯の現在の状態について検査し、結果は左上2番の歯に垂直性の歯根破折(しこんはせつ)が確認されました。
歯根破折とは、歯茎の中にある歯の根っこの部分(歯根)が、割れたりかけたりすることを意味します。こちらの患者様が歯根破折した原因は、左上2番の歯は過去に根管治療を行っており、神経を抜いた状態でした。そのため歯の血流がなくなり、免疫細胞による防御機構が失われ、細菌感染しやすい状態となっていました。
歯の血流がなくなると、“枯れ木”と同じように歯の水分がなくなるため、弱くて脆い歯になってしまい、歯根破折しやすくなります。また、歯根破折している箇所から細菌感染が発生し膿がたまっていることも判明しました。検査結果を総合的に考え、歯の保存は不可能と判断しました。
検査結果を患者様に丁寧に分かりやすくご説明し、現在の歯の状態についてご理解いただいた上で、抜歯後の欠損補綴治療として「ブリッジ」「入れ歯(義歯)」「インプラント」の3つの治療パターンをご提案させていただきました。
患者様とご一緒のじっくりと話し合った結果、両隣の歯に負担をかけず、かつ審美性も確保できるインプラント治療を望まれました。患者様にとって治療方法を決断することは容易ではありますが、当院では患者様に寄り添い的確なアドバイスをいたします。決して一人で抱え込む必要はありませんので、ご一緒にベストな治療方法を考えることを大切にしています。
インプラント治療の流れ
インプラント治療をご決断されたものの、患者様は「インプラント治療は痛いかもしれない…」「インプラント治療後に腫れたらどうしよう…」と不安に感じていらっしゃいました。そこで、なるべく身体に負担のかからない治療計画を立てました。正確にインプラントを埋入するための医療器具「サージカルガイド」を使用することで、術後の痛みや腫れがほとんどなくなり、手術にかかる時間を短縮することができます。 また、サージカルガイドを使用することで「フラップレス手術(歯茎を切らない・縫わない手術法)」を行うことができます。これらにより、患者様への負担は大きく軽減できます。インプラントの埋入に関しても、即日で仮歯の装着までを行える「抜歯即時インプラント埋入処置」をご提案させていただきました。
実際の治療を開始する前には、しっかりとした診査・診断が欠かせません。まずはCTにて検査を行ったところ、すでに歯根破折と診断した左上2番の歯の根尖部に病巣が認められました。ただ、抜歯即時インプラント埋入の基準内であったため、患者様には「抜歯直後にインプラントを埋入でき、仮歯も装着できる可能性が高いです」とご説明した上で処置に入りました。
抜歯即時インプラント埋入を行うにあたり、まずは保存が不可能と判断した歯の抜歯から始めていきました。抜歯に際しては、周囲の歯肉や既存骨に過剰な力がかかることでダメージが大きくなる可能性があります。仮にインプラントの埋入を無事に行えたとしても、歯肉の退縮や骨吸収を引き起こす可能性があり、インプラントの安定性が損なわれる可能性が考えられます。そこで、低侵襲下で抜歯処置が行える「Bennex」と呼ばれる医療器具を用いて抜歯を行いました。
その後にサージカルガイドを使用して、骨幅の狭い前歯の領域に術前のシミュレーション通りに抜歯即時インプラント埋入を行うことができました。最後に、インプラントと骨の固定値を測定する「オステル」という医療器具を用いて、インプラントと骨の固定値を測定し、仮歯を即日で装着しても問題ない数値を記録できたため、インプラント埋入と同日に仮歯を装着しました。
【症例】仮歯の装着を即日行える「抜歯即時インプラント埋入処置」による前歯のインプラント治療|インプラント治療後のデンタルX線写真|千葉県柏市の歯医者「ウィズ歯科クリニック」
インプラント治療の注意事項(副作用やリスク)
・抜歯即時インプラント埋入後の骨とインプラントの固定値次第では、インプラント体に直接仮歯を装着することができない場合があります。その場合も、両隣在歯と仮歯を固定して審美性を損なわぬよう処置します。
・インプラント治療は自由診療です。
インプラント治療のその後
最初はインプラント治療を怖がっていた患者様ですが、手術後には「痛みや腫れはなかった。処方された鎮痛剤も1錠しか飲まなかった」とのことでした。手術後の経過が順調なようでうれしい限りです。
本症例のまとめ
前歯には、見た目の美しさである審美性が求められます。抜歯と同時にインプラントが埋入でき、即日で仮歯まで装着することができる抜歯即時インプラント埋入処置は、前歯治療の第一選択肢にふさわしいと考えています。
当院では抜歯処置に際して、周囲の歯肉や骨に負担をかけずに抜歯処置を行うことができる医療器具や、歯茎を切ったり縫ったりせずに済み、なおかつ骨幅の狭い前歯部に精密なインプラント埋入を行うことができるサージカルガイドを使用しています。他にも、インプラントと骨の固定状態を数値化して確認することができるオステルなど、精度の高いインプラント処置を可能にする医療器具やメソッドを取り揃えています。
千葉県柏市の歯医者「ウィズ歯科クリニック」では、他の歯科医院で断られてしまうような症例でも対応しています。インプラント治療を検討している患者様はお気軽に相談ください。