【症例】前歯のぐらつきを主訴に来院された患者様に対してインプラントを交えた全顎治療を提案した症例
症例写真
治療前
治療後
症例の詳細
治療内容 | 下顎右側第一・第二大臼歯:インプラント治療 |
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患者様の状態・要望 | 全顎的に歯周病の進行により保存困難な歯や予後不良と考えられる歯が多数ある。患者様とは20~30年先の口腔内の安定を見据えた治療法について相談したところ、保存困難や予後不良と診断した歯に関しては抜歯し、インプラント治療をしていくこととなった。 |
治療費用 | 330,000円~ |
治療期間 | 約4か月 |
注意事項(主なリスク・副作用) | ・痛みや出血、腫れ→フラップレスインプラントにより限りなく抑えることが出来る。 |
治療概要
患者様は60歳代女性。上顎両側1番(以後、♯11・♯21と表記します)の動揺と前突感を主訴に来院されました。同部位に対しては特に痛みや腫れ等の症状は自覚していなかったものの、前歯がグラグラしていて、また年々前歯が前に突き出てしまい、見た目が気になるとおっしゃっていたため、初診時では応急的に両隣在歯と固定しました。
その後、口腔内診査・パノラマエックス線検査・デンタル10枚法撮影・歯周基本検査より、全顎的に検査したところ、♯11・♯21については歯周病の進行により根尖付近にまで骨吸収が及んでおり、保存困難と判断しました。
その他、上顎右側6・7番(以後、♯16・17と表記します)が欠損状態となっていました。
全顎的に歯周病により骨吸収が進んであり、保存困難や予後不良と考えられる歯が多数ある状態であったため、全顎的な検査と治療の提案をさせていただき了承を得たため治療計画を立てていくこととなりました。
まず、♯11・♯21が動揺してきた理由ですが、♯16・17の欠損状態が長くそのままの状態となっていたため、全体的な嚙み合わせの高さが低くなり、歯根の形態が臼歯部と比べて細い前方方向に負担がかかり、今回♯11・♯21が動揺してきたと推察されます。また。下顎右側6・7番(♯36・37)は♯16・17が欠損したことでかみ合わせを失い、歯が抜ける方向に動いてきており、右側では食事がし辛かったことから、左側でしか噛めなくなり、左側に負担がかかりすぎてしまい、左側の歯槽骨にダメージを生じて歯周病が進んでしまったと推察しました。
上記内容について患者様に現在の口腔内の状況を説明させていただいた上で、治療の目標として臼歯部咬合の回復と歯周病が進行している部位に関しては歯周組織再生療法による歯周病の改善を目的として治療計画を提案させていただきました。
欠損部の治療としてはブリッジ・入れ歯・インプラントと3つの選択肢があるため、そのメリットとデメリットを説明させていただいたところ、インプラント治療にて欠損部治療を行っていくこととなりました。
インプラント治療に関しては当院でも多くの患者様にご好評いただいているフラップレスインプラントにて行っていくこととなりました。
治療計画に際しては、治療を出来るだけ効率よく短期間で終了するために、抜歯後の治癒期間やインプラントと骨が定着する期間を考慮しました。
治療詳細
まず、精密検査より保存不可能と判断した歯の抜歯を行い、♯11・21に関しては仮歯を装着しました。次に♯16・17欠損部に関しては既に抜歯済みであり、CTより骨量も充分であったため、シミュレーション上でインプラントの埋入位置を決定した上で、3Dプリンターにてサージカルガイドを作製し、インプラント埋入処置を行いました。続いて♯36・37に関して抜歯後の骨の治癒状態が確認されたため、♯16・17と同じくサージカルガイドを用いてフラップレスインプラントを行いました。今後は抜歯により骨吸収が進行した♯11・21に対して審美性と機能面を考慮して、インプラント関連手術の一つであるGBR法(骨補填材とメンブレンを用いてインプラントの埋入に必要な骨量を再生する方法)を行い、その後♯16・17・36・37の上部構造物の作製をして右側での咬合を回復させ、残りの欠損部についてもインプラント治療を行っていく予定です。また、インプラントと骨が結合するためのヒーリング期間中に歯周病が進行している部位に関して歯周組織再生療法を行っていく予定です。
治療後の様子
現在インプラント埋入処置が数本終了した状態ですが、幸い痛みや腫れなどの症状はなく経過しています。治療自体は治療計画のまだ半分が終わった所で、今後も続いていくため、患者様の口腔内のみを注視するだけでなく治療を受ける患者様の精神面や治療に対するモチベーションが下がらぬよう声掛けを行っていきたいと思います。
ドクターのコメント
小川 泰宏
患者様の主訴を改善することは第一に必要なことですが、主訴となった歯の不具合がどうして起こったのか?と全顎的に考えることは非常に大切なことだと考えております。
今後も1歯単位でなく、1口腔1単位として口腔内を捉えて、患者様一人一人に対して、現在の状態と今後予期される状態、治療計画を説明していきたいと思います。
また、どんな症例にも対応できるよう日々技術と知識の研鑽を続けていきたいと思います!