柏市の歯医者|ウィズ歯科クリニック 医療法人社団 オハナ会

【症例】失った歯の代わりに親知らずを移植した症例

こんにちは!イオンモール柏の国道6号線向かいの歯医者ウィズ歯科クリニックの歯科医師、小川です!

今回は残念ながら保存不可能と判断した歯を抜歯し、失ってしまった歯の代わりとして親知らずを移植した症例についてご紹介させていただきます。

患者様は20歳代の女性、右下の奥歯が大きく欠けてしまったとのことで当院を来院されました。

初診時のパノラマX線写真より、右下の奥歯に大きなう窩(虫歯による大きな穴)を認めました。

右下奥歯の虫歯は神経まで達しており、神経が壊死してしまっている状態であったため、まずは虫歯を取り切った上で歯の神経の治療をする計画を立てました。治療開始当初は歯を保存する計画で治療を開始しましたが、虫歯の取り切った結果、歯の根っこに大きなクラック(歯の割れている部分)を認めたため、残念ながら保存不可能と判断し、患者様と相談した上で抜歯するという計画に切り替わりました。

さて、歯を抜歯した後の一般的な治療法は、両側の歯を削って被せるブリッジや入れ歯、インプラントといった方法があります。これらの方法は失った歯の部分を補う治療として一般的に認知されていますが、この他に今回ご紹介する親知らずを移植するという方法があります。皆さんは移植と聞くと、心臓や腎臓、皮膚など医科的なイメージがあるかもしれません。しかし、歯科にも歯の移植という治療法が確立しており、条件さえ整えば親知らずに関わらず機能していない歯を移植して失った歯の代わりに機能させることができる場合があります。この治療法は自家歯牙移植と呼ばれています。

自家歯牙移植を計画する際には次の様な点に留意する必要があります。

・移植する歯の¹歯根膜が健全な状態であること

・移植する歯と抜歯となる歯の形態が似ていること

・患者様が比較的若いこと(基本的に年齢による制限はないが、3040歳以下が理想とされている)

※¹歯根膜:歯の根っこ部分(以下、『歯根』と表記します)と骨との間にある薄い膜状の組織を指します。(下図1参照)その働きとしては、歯に過剰な力が加わるのを防ぐ、また、歯に栄養を与える役割として非常に重要な組織です。歯を支える組織として欠かせない組織ともいえます。歯根膜は口腔外に出されたとしてもすぐには死滅せず、生理食塩水などにつけておくことで延命することができます。自家歯牙移植の際は、歯根膜の劣化を最小限に抑えることが治療の成功のポイントとされています。

1:自家歯牙移植のイメージ。歯根周囲にある薄い膜上の組織を歯根膜といい、自家歯牙移植の成功のポイントです。

参照:月星光博(2014)「シリーズ MIに基づく歯科臨床 vol. 04 自家歯牙移植 増強新版」

この患者様の場合、検査の結果、移植歯である親知らずと移植先の歯の形態が似ていること、患者様は20歳代と比較的低年齢であったことから、自家歯牙移植が可能と判断しました。

そして、患者様に提案させていただいた所、今回は保存不可能な歯の抜歯をしてその代わりとして親知らずを移植する方法で治療することとなりました。

~ここからは実際の治療の流れを説明させていただきます~

①まず初めに麻酔下に保存不可能な歯の抜歯を行い、抜いた歯の幅や歯根の長さを計測しました。

②今回の場合、術前の検査で移植歯である親知らずが移植先の歯に比べて歯根の長さが2㎜程長いことが分かっていたため、抜歯窩(移植先の歯を抜歯したことで出来た穴)を調整しました。

③次に移植歯である親知らずをなるべく歯根膜を傷つけぬよう慎重に動揺させ抜歯しました。

抜いた移植歯は即座に生理食塩水中に保護し、移植歯の歯根膜が健全であることや歯の幅や歯根の長さの確認を行いました。

④その後は移植歯が抜歯窩にしっかりと適合するよう調整を行い、移植歯が動かぬよう、周囲の歯肉を固定源にして縫合し移植処置を終えました。

以上が治療の流れになります。

術後の症状について、自家歯牙移植はあくまで外科処置になるため、術後に多少の腫れや痛みは出現すると考えられます。しかしその大半は23日程度で症状は収まり、お顔が大きく腫れたりすることは稀です。この患者様の場合も、「術後数日は腫れや痛みが出たものの、1週間経過時点ではほとんど症状はない」と話されていました。

2:術前および術後1週間経過時点でのパノラマX線写真です。

術後1週間経過時点では移植歯の動揺は見られず、安定していると考えられます。今後も継続的な経過観察を続けていきます。

今回は、失った歯の部分を補う治療として自家歯牙移植という方法を症例とともにご紹介させていただきました。

自家歯牙移植は、歯の形態や患者様の年齢、移植歯の歯根膜の状態などにより、適応条件が限られているため、ブリッジや入れ歯、インプラントと比べ全ての人に適応できる方法ではありません。しかし、適応症であれば、100%ご自身の歯で噛めるようになることから、患者様にとって非常に有用な治療法であると考えます!

今後も日々患者様一人一人と向き合い、常に最適な治療を提供できるよう日々技術と知識の研鑽に励みたいと考えております!

最後までお読みくださいましてありがとうございました!

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